資格というもの

今日は、資格というものについて少し書いてみようと思ったのですが、実はこのHPを作成した初期に、「公認会計士って何者なのか」という文章を書いておりました。
その中で、「国家が資格を設けるからには、特定の業務についてはその資格者に限って従事できるようにすることで、その業務に一定以上のクオリティが維持されるように期待しているのです。」と書きました。この、資格ごとに決められた「特定の業務」を、「独占業務」と呼ぶことがあります。この独占業務は、国民にとって、その業務の提供を受ける必要が生じたときにきちんとした水準のものを提供されることが望ましい専門的サービスが選ばれていると考えてください。例えば、病気の治療、裁判における弁護、税務申告書の作成といったものです。それぞれ、医師、弁護士、税理士の独占業務(の一部)ですね。

資格試験を課することで、その業務に従事するための知見や適性、能力が一定水準以上であると認められる者を選抜する。選抜された合格者に資格を与え、独占業務に従事させる。無資格者には、その業務に従事することだけでなく、その資格の名称や、それを伺わせる紛らわしい名称の使用を禁止する。そうすることで、国民が、どうしても必要な専門的サービスを受けようとして実は提供できる力の無い業者にひっかかることを防いでいるわけです。

公認会計士の場合、その特定の業務とは、「法定監査※」なのです。
会社法、金商法(かつての証取法ですね)、私学助成法等々の諸法律において、公認会計士による監査が法定されています。
(上述「 公認会計士って何者なのか 」より抜粋)

税理士の場合は、税務書類の作成や、税務代理がそれに当たります。
納税者のために税務申告書を作って差し上げ、それを代わりに税務署に提出したり、税務調査官が調査に来るときにはそれに立ち会ったりするということです。
(同じく抜粋)

監査について少し補いますと、公認会計士が監査した結果として、「この決算書の内容や書き方はルールに沿ってきちんとしたものですよ」という結論を「監査報告書」というフォーマットにまとめるのです。そしてこの監査報告書(※)を付した決算書は、利用したい読み手にとって一定限信頼して読めるものとなる。 
……クオリティの信頼できる業務の提供を誰が出来るのか分かるように資格を授ける、というのと、少し似た方法論だと思いませんか?
独占業務は、国が無資格者の従事を禁じることにより(もちろん同時に無資格者が資格を標榜することを禁止して)、クオリティを保証している。大企業の決算書は、国が大企業に会計士の監査を受け監査報告書を付すことを義務付けることでクオリティを保証している。そういうことなんです。
   ※ 正確には、いわば「○」と結論付けた監査報告書が付されていると、ということですね。実は「△」や「✖」なども稀にあるんです。

最後に、私自身と資格について。私自身は、資格を取ったことで、それ以前と比べて「生きやすくなった」と感じています。もちろん経済的な面もあるのですが、少しは私の言うことに耳を傾けてもらえる機会が増えた、という実感があり、それが大げさに言うと自己実現のようなことにいくぶんなっているのだと思っています。
……皆さんは、資格取得、お考えになりませんか?あるいは取得してどうでしたか?

この記事を書いた人

公認会計士・税理士 林宗義